METEOric RESEARCH


風船おじさんは
どこへいった
2001/06/01

 いつのことだったろう、おじさんが風船に乗って飛び立ちました。数時間後無線電話の電波がとぎれ、それ以来おじさんの行方は分かりません。
 いまでも時々「あのおじさんはどこへいったのだろう」ということが話題にあがります。
 「宇宙のはてまで飛んでいったのかな?」とか、「海に落ちたんだろう」とか、いろいろ想像されています。

 おじさんが乗った風船の材質と強さによりますが、海に落ちたことはまちがいないと思います。
 しかし、風船の材質と強さによって落ち方が大変ちがってきます。
 よく見る普通のゴム風船だったら一万メートルの高さから真っ逆様に落ちたでしょうし、伸び縮みしないプラスチックのような生地でできた風船だったら海面に軟着水したかもしれません。

 気象観測を仕事としてきた経験から、風船の飛び方の違いを考えてみましょう。

 ゴム風船の場合

 地球の空気(大気と呼びます)は、上空へ行くほど薄くなっています。風船が上空へあがると薄い大気とバランスをとるため風船はふくらもうとします。風船はゴムでできていますからふくらむことができます。ふくらんでも、ふくらむ前と同じ浮力(上昇する力)がありますから、風船が破裂するまでどんどんあがります。
 ラジオゾンデという上空の気象を観測した一例を図で示します。このときに使う風船はゴム風船です。

 この観測は、1時間で約12km上昇しましたが上昇速度はほとんど変わりません。そこで風船が破裂しました。ラジオゾンデの場合はパラシュートをつけていますからフワフワと落ちてきますが、そうでない場合は真っ逆様に落ちてきます。

プラスチック風船の場合

 特別な気象観測でプラスチック風船を使うことがあります。まったく伸び縮みしない生地でできています。
 その風船に少し多めにヘリウムガスをつめて、重りをつり下げて浮力がほとんどないように調整して飛ばします。
 すると大気が地上近くでは濃くて上空では薄いので、 ちょうど釣り合う大気の濃さの高さをフワフワと飛んでいくことが期待できます。
 夜とか曇りの日のときは、だいたい期待するように飛んでいきます。図は海抜500m付近をフワフワと飛んだ例です。

 しかし夏の日中の入道雲がモクモクと沸き立つようなときは、ほとんど期待するような飛び方はしません。上昇気流と下降気流が激しく動いているからです。風船を包んでいる大気が動いているのですからしかたありません。
 でも、ゴム風船のように1万メートルまで上昇することはほとんどありません。
 上昇気流に乗って高く上がった風船は、今度は下降気流に乗って降りてきますが、真っ逆様に落ちることはなくフワフワと降りてきます。途中で上昇気流に出会わなければ、地面か海面と衝突するまで降りてきます。



 
布製風船の場合

 布を貼りあわせてつくった風船、たとえばアドバルーンや飛行船型の風船(この場合は気球と呼ぶべきか)です。
 この気球は、通常はロープで地面に固定して上げるのですが、たまに飛ばしてしまう事故があります。
 その事故のすべてが、気球の布が裂けて中のガスが抜け、フワリフワリと落ちてきます。

 飛行に最適なのは熱気球

 今まで述べてきた風船(気球)は、全部風船の中にガスが閉じこめられているものでした。
 ゴム風船に乗って飛び立ち、好きな一定高さを保つことは不可能です。ちょっとでも浮力があれば上昇を続けます。
 逆にちょっとでも落ち始めれば、落ちた分風船が縮みそれにつれて浮力は減少し、加速度的に落ちる速度が増してしまいます。
 プラスチック風船の場合は、ゴム風船ほど極端ではありませんが、乗っている人が高さをコントロールすることは至難の業です。

 閉じた風船ではなく、開いた風船があります。開いた口から暖かい空気を吹き込んで飛び上がる、ご存じ熱気球です。
 熱気球の場合は、閉じた風船に比べてずっとコントロールしやすいです。
 だから熱気球がはやっているのですね。

 

 風船おじさんのゆくえ

 気球を使った仕事をしてきた経験では、風船おじさんは、高さをコントロールしようとしなかったら1万メートルかそれ以上から、高さをコントロールしようとしたらその高さから、真っ逆様に墜落同然で落ちてしまったものと考えられます。

 ”赤い風船に乗って、お空の上から眺めてみたい”

     ほのぼのと歌われている風船ですが、
     なかなかもって、
     ひとに自由にさせる柔軟な個性は持ち合わせていないようです。

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