METEOric RESEARCH


ノンリフトバルーンの飛び方
2014/01/03

 昔は煙突から出る煙は下のように見えました。最近は防塵装置の発達によりほとんど見ることが無くなりました。


(2枚とも「煙ー大気中における振る舞いと姿ー・横山長之」より)

 現在稼働中の焼却工場の煙突から出ている見えない煙がどのように流れているか、また新たに建設を予定している場所で建設後の煙を予想しようという試みが行われることがあります。
 そういうときに行う調査方法に「ノンリフトバルーン観測」というものがあります。
 伸縮性の無いプラスチックの生地で作られた正四面体の気球を使います。
 ヘリウムガスを充填し重りを調整して無浮力になるようにして飛ばします。
 普通煙突頂の高さで無浮力となるようにしなければなりませんので複雑な計算をして調整し飛ばします。

(株)気球製作所のHPより)

 実際現場で調査を担当し、前掲の煙のように飛ばないので途方に暮れた方が多かったでしょう。
 飛ばしたと思ったら上昇し始めどんどんどこまでも上昇するし、最初落ち始めると地面に着くまで落ちる。
 昼間は全部そうなってしまう。
 夜はだいたいうまくいくが。

 それは、煙の流れる姿と同じく上下に蛇行して飛ぶものと錯覚・誤解しているための失敗です。
 それでは流れる煙が蛇行して見えるのはなぜでしょう?
 実は1個の煙が蛇行して流れているのではなく、多数個の煙がてんでんバラバラに流れた結果が蛇行した形で見えるのです。
 煙突から出た煙は煙突頂に吹く風に直接影響されて永久にそのベクトルで飛び続けるのです。
 最初上向きの風だったら永久に上昇を続け、下向きの風だったら地面と衝突するまで下降を続けます。
 水平の風だったら永久に水平に飛びます。
 煙突頂の上下風は時間的に波打っていますので煙は上下波打ったように流れる訳です。

 拡散の理論を学んだ方はご存じですが、風向変動はそのまま汚染物質濃度の分布と一致します。


(「煙ー大気中における振る舞いと姿ー・横山長之」より一部加筆)
 

 図中の赤丸は煙の中の1個の粒子を模式的に表し、赤丸(粒子)は煙突から赤線の様にまっすぐ飛びます。決してふらふら蛇行しては飛びません。
 実際に煙突から煙の出ているのを目撃したらよくご覧下さい、煙のそれぞれの部分は蛇行せず一定方向に広がっていきます。
 ノンリフトバルーンもこの粒子と同じで一直線に飛びますので、上昇する時は上昇し続ける訳です。

 風向変動の一定時間の出現頻度は正規分布(ガウス分布)で表されることが多く、濃度の一定時間の平均値も同じ分布をします。
 上図の横軸は距離であり、また時間です。
 この正規分布(ガウス分布)は上下方向も水平方向も同様な分布をします。
 この分布の仕方は水平方向はσyで上下方向はσzであらわされます。
 拡散計算に使われる正規型プルーム式は発生源から出た汚染物質は初期の放出ベクトルで永久に飛び続けるという式です。
 例外(?)として、地面と上空のLid(蓋)で反射することを条件に加えます。
 朝の接地逆転層崩壊時は地面とLid(蓋)で何度も反射を繰り返すという条件で計算します。
 ノンリフトバルーンの飛び方の「反射」は地面との衝突であり、上空のLid(蓋)での反転に当たります。



環境アセスメント手法入門・横山長之

 ノンリフトバルーン観測をこのように見ると、煙の流れの再現としては不適切であることが結論されます。

 それでは前掲の煙の流れを再現する方法が無いかといえばあるのです。
 横方向の流れを推定再現するにはパイロットバルーンを連続して放球・観測してそのデータから流跡線を作成します。
 筆者は5分ごとに13個放球し観測して1時間の流跡線を作成しました。
 パイロットバルーンは同時に複数高度のデータを得ることができますので、例えば100mの流跡線と200mの流跡線を作成して上下の違いを確認することができます。
 係留気球に風向風速計を搭載して詳細なデータを得ることも有効です。
 安価な気象観測機としてケストレル4500があります。
 上下の流れを推定再現する方法は横方向より難しいのが現状です。

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